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マル虫絵日記

イラストレーター マルヤマ ジュンのブログ

出産日当日の事

教育番組的なノリで書きます僕です。
あと、今回は文章が長いので、興味がある方はお付き合いください。では。




出産。それは、夫婦と子供が一番最初に力を合わせて協力する感動的な出来事。




こんにちは、マル虫ドキュメンタリー24時です。
今回の特集は、「出産日当日の出来事24時間」です。


一般的な妊娠から出産までの事は多くの本や母親学級などで知ることが出来るのですが、出産日当日の事となると、じつはあまり情報がないのです。
それは、きっと出産日当日のママはもう必死なため記憶も意識もあいまいになり、その様子を最初から最後まで見れるのは助産師さんだけだからでしょう。
正確には助産師さんも忙しいので、いつも側に居てくれるわけではありません。
ママは一人で陣痛の痛みと長時間戦うことが多いのです。


最近ではパパの立会出産も増えているため、ママが一人で出産に立ち向かうという不安もだいぶ解消されているようです。
今回は番組に協力いただいたある夫婦の出産日に密着。パパに出産当日の様子を記録していただきました。
なので、このドキュメンタリーはパパ目線での出産日について書かれています。

これから出産を控えている方、すでに出産を経験した方、立会出産を考えているパパ、色々な人にとって出産とは何かを考えるきっかけになればと思います。





11月27日(土)
朝方に出産の兆候を表す「おしるし」が見られ、嫁さんの体が出産に向けての準備が整ったことが分かります。
この頃から陣痛を予感させる痛みが不規則なタイミングでお腹のあたりに感じるようになってきます。


PM9:00
お腹の痛みの間隔が10分おきくらいになり、規則的になってきます。
病院へ電話して、現在の状況を話し、一度病院へ行くことが決まります。
そのまま入院する事も考えられるので、荷物も一緒に持っていきます。荷物はとても大きいので僕が持ちます。


PM10:45
タクシーで病院に着きました。
深夜の救急で休日ということもあり、嫁さんは医療費の心配もしています。
痛みがあるにもかかわらず、まだまだ余裕があるようです。
さっそく嫁さんの診察が始まりました。僕は廊下のベンチで診察が終わるのを待っています。

診察の結果、陣痛の間隔が5分おきになるまで、一旦家に帰ることに決まりました。
入院の荷物を病院に預けて、タクシーで家に帰ります。




11月28日(日)
AM0:00
家に着きました。
お風呂に入って、就寝します。
けれど、嫁さんはお腹の痛みでほとんど寝れないようです。
僕は1時頃に寝てしまいました。


AM4:30
嫁さんの陣痛の間隔が5分おきになってきました。
病院へ連絡して、再度病院へ向かいます。
僕はビデオカメラを片手に実況中継しています。


AM5:10
病院に着きました。
嫁さんは分娩室に案内されました。その間に僕が入院手続きをします。
エレベーターで同じように奥さんが陣痛を迎えた方の旦那さんと一緒になり、少しお話をしました。
「男は何もしてあげれないですよね」とお互い苦笑です。
このパパ二人の子供は誕生日が一緒になると考えると、とても心強いですねー。


AM5:30
僕も分娩室に入りました。
その部屋はこんな感じです。

この病院では、陣痛と分娩を同じ部屋で行うことが出来るようになっています。
トイレや洗面台などが部屋の中にあり、自分の部屋のようにリラックスして陣痛の間を過ごし、そのまま分娩へと移行できます。


嫁さんのお腹にベルトのような機械が取り付けられ、陣痛の間隔を計測します。
陣痛の間隔が山なりに記入されて本体の機械から紙がベベベーと出てきます。
陣痛の痛みが強いほど、山も大きく記入されます。
この時はまだ、大きい山や小さい山が不規則にやってきているので陣痛の痛みも不規則なようです。


AM6:45
これからの長い一日に向けて、仮眠をすることになりました。
部屋の電気を消して、僕も椅子に座って目を閉じて休憩します。
ふと、目を開けると嫁さんがベッドの端をギュッと握っているのが見えました。
きっと、痛みで寝ることなど出来ないのでしょう。


AM7:30
陣痛の合間に少し寝ている嫁さん。
僕は今の状況を嫁さんの親と自分の親へメールします。


AM8:00
朝食の時間です。嫁さんには病院の食事が出ます。
僕もコンビニでおにぎりを買ってきて、一緒に食事をします。
食事中も陣痛で、痛みが来たらウウッと痛みに耐えて、痛くない時にパクパク食べます。
なんだかんだで、嫁さんは完食してました。


AM9:45
陣痛の間隔が5分おきに規則的に来るようになりました。
僕は色々おしゃべりをして痛がる嫁さんの気がまぎれるような事しかできません。


AM10:00
嫁さんのお母さんが来ました。
嫁さんもお母さんと話をして、気分が少しは楽になったようです。


AM10:15
助産師さんがアロマを持ってきてくれました。
部屋の中に、いい匂いが漂います。
アロマで気分をリラックスさせるのが目的らしいです。


AM11:00
まだ、出産には時間がかかりそうなので、嫁さんのお母さんは一旦帰る事になりました。
僕は、お母さんを見送り、部屋に戻って嫁さんの腰のあたりをマッサージします。
腰の少し下がわを軽く押してマッサージすると、少し痛みが和らぐようです。


PM0:00
昼食タイムです。
嫁さんは病院のご飯、僕は先ほどお母さんが差し入れしてくれたおにぎりを食べます。
嫁さんは、まだ結構食欲があるようで、昼食をほとんど完食しました。
一方僕は、すでに食欲が低下。


PM1:00
陣痛の間隔が3分くらいになりました。
痛みが引いては、次の痛みが来るようで、嫁さんは少し辛そうです。
僕は相変わらず腰のマッサージと「がんばれ」しか言えません。


PM1:30
嫁さんは、これから痛みが大きくなると身動きも取れなくなってしまうので、病院のシャワーを借りて汗を流します。
熱いシャワーで気分のリフレッシュにもなるようです。
シャワールームに行くまでにも陣痛が来るので、立ち止まったりをしながら、すこしづつ動きます。


PM2:00
嫁さんもだいぶ体が疲れてきたようです。
体を横にして寝ていると痛みが強いので、立ち上がるのですが、立っているのも疲れるので、どうするか悩みどころです。
結局、横になって「痛みは少し我慢する。」という言葉を辛そうにしゃべりました。
(辛いよなー。頑張れ嫁さん。)と思う僕。


PM2:30
横になった嫁さんは、寝る・陣痛・寝る・陣痛の繰り返しです。
これまでは、腰をマッサージしてあげた僕に「ありがとう。」とか「もう大丈夫。」と言っていた嫁さんですが、この頃には声も小さくなり、それらを言うのも辛そうです。


PM3:00
分娩室は温かめに室温が設定されているので、やや暑いです。
嫁さんも暑そうなので、パタパタ仰いであげます。
今の僕に出来るのは、仰ぐ・さする・仰ぐ・さするの繰り返しです。


PM3:30
陣痛の間隔が短くなっているので、検診をします。
例の山なりが記入される機械を着けて、しばし様子を見ます。
前回の時より、山なり線の山裾の境目が少なくなっていて、常に陣痛の痛みがあることが分かります。
嫁さんも痛みが大きいためか「アー。」とか「ハアー。」とか息を出して痛みに耐えています。


PM4:00
嫁さんの陣痛が山場を迎えたようです。
ここからは壮絶な時間でした。
嫁さんは、とにかく痛いようで、「あーーー。」と大きな声を出して痛みと戦っています。
僕は、さすってあげる事と痛みが収まった時に「よくやったね。」と励ますことを繰り返します。
これ位しか出来ずに、男はつくづく無力だなーと感じますが、少しでも嫁さんのためになればと頑張るのです。


PM5:30
痛みと一緒にいきみたくなる嫁さん。けれど、まだお腹の中の子供が下へ降りてきていないので、いきむのを堪えて痛みに耐えます。
いわゆるラマーズ法などはこの場面に使うもののようです。
ヒーヒーフーやヒーフーと息を吐いて、痛みに対して体に力が入らないようにします。
助産師さんや助産学校の実習生の方が嫁さんをマッサージして痛みを和らげるようにしてくれています。
僕は、ひたすら「あと少しだから、頑張れ」と声をかけます。


PM6:00
いよいよ、いきみにゴーサインが出て、出産の最終段階を迎えます。
陣痛のタイミングでひたすら力いっぱいいきみます。
嫁さんが僕の手を握っていきんでいます。
もう、僕も必死で「あと少しだ。がんばれ。息子も頑張ってるよ。」と応援しながら、ビデオカメラを回します。
分娩室内もお医者さんなど総勢10名。
なんだか、すごい人数が嫁さんの出産に立ち会っています。


PM6:37
「うぎゃー。」という声とともに息子くんが産まれました。
やったー!!
産まれてきた息子くんを見て、僕は号泣でした。
涙が止まらないっ!!
嫁さんのホホにも一筋の涙が…。
でも、僕が号泣しているのを見て少し笑っていました。


嫁さんとの対面をした息子くんは、その後に身長や体重、体温などの検診をしました。
その時に、名札カードに子供の名前を書いて下さいと助産師さんに頼まれた僕は、初めての息子くんの名前を書くのに緊張したのか、頭の中に漢字が出てこなくて焦りました。


こうして長い長い一日が終わったのでした。


「いやー、出産というのは、感動的であり、そして人生の大きな大きな一日ですね。」
「そうですね、今回は協力いただいた夫婦の事例ですが、人によって陣痛の時間や出産の仕方などはさまざまですしね。」
「それを、夫婦で乗り越えていき、子供が誕生するのですね。」
「今日は、先ほどの夫婦の旦那さまから、出産日を振り返っての手紙がありますので、それを読んで番組を終わりにしたいと思います。」



こんにちは。
子育てとーちゃん一年生がスタートしました。
今は嫁さんの実家と自宅の往復をしながら、子育てとーちゃんをしています。
出産に立ち会えたことは、僕にとっても、とても良かった事だと思います。
陣痛の始まりからずっと嫁さんと一緒に居れた事は、一緒に出産を経験したようで、パパになるための心構えにも影響したように思います。
これからの子育ても夫婦で仲良く協力して出来るという自信がつきました。
あの日、家に帰ってきて思った事は、大きな充実感と寝不足の疲労と、これから子育てとーちゃんとしても頑張ろうという大きな決意と家族が増えてワクワクした気持ちでした。